異世界恋愛はどうして嫌われた?漫画家に愛されることを考えてみた!

「異世界恋愛を描きたくないですわああっ!」
中世ラブロマンスのような服装をした美少女が、叫んだ。
それは同人漫画だったが、リアルの火種に……。

中世ラブロマンス描きたくない事件

Twitter(現、X)に掲載された部分が、上記でした。
描いたのはプロで、異世界恋愛のコミカライズを受けていたことから大問題に!

仕事としての信頼関係を損なった

本人が言ったわけではなく、同人漫画のキャラの台詞せりふです。
そこは、忘れないでください!

仕事として請け負ったジャンルをけなすのは、NG!
出版社やエージェントの顔を潰したうえ、異世界恋愛の関係者を敵に。
Xに掲載しなければ、もしくは、逃げ場がある描写なら、まだ言い訳できたが……。

プロと素人の違いは、信頼関係の有無!
安心して任せられるから、お金を払ってプロに任せて、様々なデータも渡すのです。

オリキャラに「描きたくない!」と言わせた先生は、厳しくなるでしょう。
私が気になったのは、そう言わしめた背景です。

なろう産の異世界恋愛が山となっていく

『小説家になろう』のランキング改変で、異世界転生・転移が追放されました。
短編から異世界恋愛に染まり、長編の総合ランキングすら『アルファポリス』のような状態!?
(2024年12月には、ランキングの仕組みを戻しています)

書籍化はなろうを時間差で反映するため、異世界恋愛はどんどん増えます。
ビジネスモデルは、以下の通り。

  1. 出版社がランキング上位を拾い、書籍化
  2. 並行して、コミカライズ
  3. 発行部数100万部でアニメ化
  4. グッズ、ゲーム化、コラボで、新規ファンを取り込む

全てのジャンルに当てはまり、異世界恋愛は3番目まで。
つまり、コミカライズの正否がそのまま反映!

使い捨ての漫画家の悲哀でもある

なろうの作品は、使い捨て!
『転生したらスライムだった件』『オーバーロード』のメガヒットは、もはや過去。
テンプレによる即席で、素人も楽に書けるというだけ。

ラノベ作家、特になろう出身は、趣味による執筆。
家事や仕事の合間にWEB連載をして、ランキング上位で夢の書籍化♪
1巻切りでも、ずっと自慢できます♪

対して漫画家は、かなり悲惨。
ビッグタイトルとは程遠い、使い捨ての作品に命を燃やす……。

むろん、金太郎飴きんたろうあめだろうと仕事があるだけマシで、感謝するべき。
愚痴はあっても、それを世界中が見られる状態にしたら、ダメですね。

「推しの子」が炎上した事件との比較

刺激的なストーリーで大人気になった、『推しの子』。
こちらも、とある理由で炎上!?

問題発言は多いが最後のラインは遵守

『推しの子』は、アニメ化が大成功で、原作コミックも売れまくり!
原作者と漫画家のコンビにより、考えられた伏線と美しい絵を楽しめる……はずでした。

漫画家から原作者に転向した赤坂アカ先生は、SNSで問題発言が多く。
作画の横槍メンゴ先生が沈黙していることや衝撃的な最終話により、納得できないファンが騒ぎました。

ずっと応援してくれた読者を裏切るような丸投げで、物議をかもしたのです。

赤坂アカ先生はオープンな方ですが、受けた作品のジャンルを貶していません。
個人的に、「畳み方は早足だったなあ」と感じましたが……。

カグヤ様の大成功でお金に困らず?

日本のサブカルは、漫画文化です。
ラノベは漫画のためにあり、『推しの子』のように原作者となるケースが少なくありません。
全盛期ですらラノベは1,000万部いくかどうかで、漫画のほうは億単位!

赤坂アカ先生は『かぐや様は告らせたい』で大ヒットして、お金に困らない立場と思われます。
出版社の担当編集も、強く言えないのでは?
実績とお金があり、業界的にも繋がりがあるでしょうし。

伏線を投げた感はあるものの、そのライブ感でヒットしました。
そもそも、クリエイターに品行方正を求めるのがおかしく、SNSを制限するのが一番。
だけど、学校の先生じゃあるまいし、担当編集は言えないですよね?

赤坂アカ先生には、まだ出番があるでしょう。
2つも大成功させたIPがあって、まだ底が見えないのなら、当然です。
実績があれば、いくらでもスポンサーや提携先を見つけられます。
管理するのは、マネージャーや担当編集の仕事。

成功した漫画家は億単位を稼げる

『薬屋のひとりごと』もそうですが、成功した漫画家は億を稼ぎます。
その夢があればこそ、彼らは描き続けるのです。

商業デビューした漫画家は成り上がりたく、使い捨てに納得せず!

けれど、なろう小説は使い捨て。
ランキング上位のパワーで初版を売り切って、似たようなテンプレを量産します。
そのおかげで、仕事も増えましたが……。

コミカライズをしても、大成功はありません!
ただ請け負い、自分がツッコミを入れたくなる物語を描いて、納期に間に合わせるだけ。
工場のライン作業と同じです。

量産型なろう作家と漫画家の温度差

なろうのビジネスモデルは、漫画家に負担がかかっています。
中世ラブロマンス描きたくない事件も、その現れでは?

なろう作家は兼業で一発当てたい

なろう作家は、アニメ化したプロですら兼業!
『魔法科高校の劣等生』ぐらいの人気作で、漫画やグッズなどの収入を含めて、ようやく専業へ……。

テンプレを使おうが、無から有を生み出すのは大変でしょう。
それでも、コミカライズの漫画家より楽だと言わざるを得ません。

なろう作家は、担当編集に任せてノータッチ。
人によって、顔合わせやネット通信で挨拶をするでしょうけど。
コミカライズをする漫画家との打ち合わせは、しません。

初版の印税をもらい、電子版についても受け取り、最後にコミックの原作料。
コミカライズは、原作者として株の配当。
こちらで売れれば、何もしないまま、いきなり先生と呼ばれる立場です。

プロの漫画家は人生を賭けている

量産型なろう作家は、デビューすれば、お気楽です。
最初から「これでメシを食う!」と考えませんし、担当編集も「仕事を辞めないで」と忠告。
ランキング競争やリセマラはあるものの、書籍化までの試行錯誤。
何よりも1人でやれるから、スピードアップが容易です。

対する漫画家は、「これでメシを食う!」と決意した人々。
今のコミカライズには商業誌で連載していた人もいて、彼らが納得するとは思えません。
口に出さなくてもね?

スナックのように消費され、振り返ることもない。
『小説家になろう』のランキングは多様性を排し、2020年代は異世界恋愛ばかり!
同じような話を描くのは、さぞ苦痛でしょう。

だからといって、「商業誌の経歴があるから、あなたは相場の10倍で!」とはならず。
安くても請ける人はいくらでもいて、たたき売り。

なろう小説の整合性を丸投げされる?

漫画家も、生活のために稼ぎます。
しかし、なろうのコミカライズは、前工程で手抜きしたところが流れつく場所!?

  1. 服装を一から考える
  2. 原作者と編集が納得するキャラデザの考案
  3. 明らかな矛盾についても、フォローしつつ描写
  4. オリジナリティはなく、言われた通りにリテイク

プロであれば、使い回しができる素材、資料集があるでしょう。
しかし、ツッコミどころ満載のストーリーやキャラがいても、口出しを許されない。
提案には、神経を使います。

担当編集がいい加減で、原作者がキレた事件もありました。
『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』は人気作であったのに、編集部が原因による打ち切り。
このケースでは漫画家に短納期を押しつけており、業界的に負担がかかっている状況と言わざるを得ません。

当たり外れが大きい時代では省力化!

猫も杓子しゃくしも、冒険を嫌います。
リスクを取るより、目の前にある小金を狙うだけ……。

異世界恋愛は基本的に売れない

なろうのランキングが時間差で反映され、異世界恋愛の登場!
けれど、売れないんですよ。

そもそも、『アルファポリス』の専売特許で、作家とユーザーを自前で育てる地産地消。
小さく売って、小さく儲けるだけ!
大きなビジネスに繋がらないジャンル。

女性が女性のために書くから、ものすごく主観的で、結論ありき。
けれど、同じ女ですら、「ないわー!」とツッコミを入れたくなる展開です。
女主人公が認められ、登場したスパダリに溺愛され、どれもワンパターン。

男をバカにするから、男性には売れない。
女も他の女の主観を嫌うため、一定の層へのアピール。
それも、投稿サイトのランキング上位という追い風がある、序盤じょばんだけの……。

漫画家は1つの事業でアシを雇う

最大の問題は、漫画家は1つの事業であること!
アシスタントを雇い、分業による制作。
当たり前ですが、彼らへの給料は雇った人間の負担です。

零細企業と同じ構図。
キャッシュフローが破綻したら、倒産します。
大成功した先生でも、ベテランに抜けられたら原稿を落とすほど。

締め切りに追われる週刊とは違い、月刊やWEBでは1人も。
アシ前提となれば、ラノベ作家のように「自分でやれば」とはいきません。

兼業のラノベ作家は筆を折れますが、漫画家は人生を賭けています。
日雇いで糊口ここうをしのぐにせよ、会社勤めができないタイプ。
使い捨てにされれば、ストレスが溜まるどころじゃありません。

コミカライズは漫画家に負担をかけすぎ?

異世界恋愛に限らず、なろうの焼き畑農業では、一番後ろにいる漫画家にしわ寄せ!
文字なら「キンキンキン」で済むけど、コミックは描く必要があるから……。

なろうはラノベではなく、コミックの売上に頼っています。
けれど、その原作はストーリーが破綻しているわ、キャラがブレているわで、もう大変!
フォローすることも、コミカライズの仕事です。
一部では、「漫画家による介護」と言われている有様。

テンプレが前提で、なろう小説は「何が起こっているのか?」の描写をせず。
まともな小説は嫌われるため、ランキング対策でもありますが。
世間からズレすぎた作品を少しでも読みやすくする漫画家は、たまったものではない。

おそらく、担当編集は丸投げです。
ネームを見るぐらいはするでしょうが、整合性をとるような仕事は放棄かと。
誰もかれもが、漫画家に甘えている。
それで、MAX50万部で平均10~20万部で打ち切りのテンプレとなれば、やる気が出るわけもなく。

イラストは買い叩かれやすい現実

元々、イラストは買い叩かれやすい。
苦労も知らず、「絵を描けるの? じゃ、店のPOP作っておいて!」の一言。

大ヒットした「薬屋のひとりごと」は特別

2020年のなろうは、大ヒットは生まれません。
『薬屋のひとりごと』は異世界恋愛ではなく、文芸の推理でした。

2010年の前後は、まだ埋もれている名作を掘り出せる時期。
だが、2つ目の『薬屋のひとりごと』はなく、異世界恋愛という、共感しにくい作品の山ばかりへ。

異世界恋愛は、女主人公とスパダリのどちらも美しくあることが大事。
ライバルも、それなりに描く。
衣装のデザインまで考えていたら、そりゃ愚痴の1つも言いたくなる……のかも?

その点では、手抜きが許される異世界チートのほうが、よっぽど描きやすい。
ギャラとしても、変わらないでしょうし。

限界を迎えた「なろう」と面倒を見ない出版社

2024年の『小説家になろう』は、異世界恋愛に染まりました。
『カクヨム』へ逃げた異世界転生・転移を呼び戻していますが、焼け石に水。

そもそも、なろうは高尚ではなく、素人がテンプレで遊ぶところ。
商業誌のように担当編集がフィックスしない手抜きに、問題があります。
大手ですら悪かろう安かろうで、ランキング上位を売り逃げ。

とある編集長も嘆いていましたが、「こんなことを繰り返せば、信用をなくす!」という話。
ジャンクの使える部品を売るような仕事では、編集も育ちません。
今となっては、なろう系という蔑称べっしょう

なろうの知名度が上がり、同じテンプレということで、お金を出さず。
出しても、怖いもの見たさの1巻だけで、作品を愛しているわけではない。
まさに、地獄絵図。

転スラという理想的な関係を忘れたくない

なろうの黎明期れいめいきは、『転生したらスライムだった件』がありました。
コミカライズで大成功した事例で、担当の漫画家は作品を愛しての立候補。

「仕事だから、文句を言うな!」
正論ですが、売れないと分かっている量産品で、自分も感動しない小説のコミカライズは辛い。
なろうのコミカライズが漫画家を犠牲にしている以上、いずれ破綻する?

「あの先生が、なろう堕ち!?」という、ファンの嘆き。
商業誌で連載していた漫画家も、なろうコミカライズを請け負う時代。
しかし、その先に未来はない……。

それでも、お金が回っているだけ、マシでしょう。
異世界恋愛についても、なろうの一角として続くと思います。

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