美味しい食事は、それだけで幸せ!
科学技術が遅れている異世界となれば、現代の料理はチート!?
1つのテンプレであるものの……。
偉大な先駆者、異世界居酒屋「のぶ」
2012年の秋からWEBで連載した、異世界グルメの代表作!
先行者利益だけではない、その魅力とは?
現地にある店としての溶け込み
異世界居酒屋「のぶ」は、商店街のすみにある飲食店。
1階が店舗、2階が住居スペースで、賃貸物件としての利用。
老舗の料亭で修行していた矢澤信之が、店主を務める。
「洋食のねこや」との違いは、異世界にあること!
どこかに玄関ドアが出現するわけではなく、表玄関がそのまま。
裏口は、現代社会へ繋がっています。
店員は20代前半の「千家しのぶ」で、見た目はロリ。
ノブが修行していた料亭の跡取り娘だったが、政略結婚を嫌い、家出による押しかけ。
街の一部で、仕事が終わった衛兵などが飲みに来る。
『異世界食堂』と比べて、思わぬトラブルが起きやすい環境です。
地元密着の異文化コミュニケーション
異世界居酒屋「のぶ」にやってくる客は、異世界ファンタジーの一般人。
それゆえ、「この料理がどれだけ素晴らしいのか?」という展開へ。
若旦那がイキっているわけではなく、客と共に歩んでいく日々。
主人公は静かに料理をこなし、嫌みを感じません。
客と話すのは、基本的にシノブ。
地元密着で、商店街にある飲食店と同じ。
不動産だから逃げ場はなく、古都アイテーリアに溶け込むだけ。
時には、料理やインテリアを不審がられ、シノブも狙われる。
『小説家になろう』でありがちな、気持ち悪いキャラや言動がない。
国の駆け引き、徴税などのを挟みつつ、異世界居酒屋「のぶ」でメシを食う人々。
ノブ・タイショーは今日も店を開き、彼らの拠り所となる。
ヒロインも現代人だからスムーズ
明るいシノブを率先して動かすことで、主人公の格を下げず。
うっかり失敗しても、ノブが助ければいい。
彼女が自分のことを優先した場合でも、角が立たず。
正面玄関がファンタジー世界に接しているため、現地との接点が増えていく。
基本的に善人で、悪人がいても因果応報!
- 庶民文化である居酒屋
- 修行したうえに謙虚な主人公
- 店の中は平和という安心感
- 複数の国による勢力争い
ヘイト管理が上手く、異世界クロスオーバーとしても秀逸!
この名作によって、第二弾である『異世界食堂』が連載されました。
ほぼ同時期に始まった異世界食堂
異世界居酒屋「のぶ」に影響されたのか、『異世界食堂』も連載スタート!
現代の飲食店が異世界と繋がってしまう点は同じだが……。
限られた客だけを招くから混乱しない
オフィス街にある「洋食のねこや」のドアは、土曜日だけ異世界と繋がる。
知る人ぞ知る名店となり、良い距離感を保ちます。
暴力が当たり前の中世ヨーロッパとなれば、どのように店を守るのかが重要!
権力者に目をつけられたら、お抱え料理人か、店とノウハウを奪われて仕舞い。
チートなしの『異世界食堂』は、異世界居酒屋「のぶ」と並ぶ、異世界グルメの看板へ……。
30代の渋いオッサンが、現代でも通用する店舗で、修行の成果を見せていく。
複数の世界をまたぐも、その転移は「洋食のねこや」に依存しているため、嫌みがない。
異世界のどこに出現するか不明なドアは、それを見つけて入ることが冒険。
『美味しんぼ』のように、悩んでいる人を招き、本来はあり得ない美食で幸せに。
アレッタという自然な繋がり
現地の住人として、アレッタの雇用。
飲食店でよくある賄いにより、本人は「食いっぱぐれず、金も得られる」として満足。
コミック、アニメでも、メインヒロインとして扱われ、可愛くも品のあるキャラ。
なろう系にありがちな、チアガールにあらず。
「洋食のねこや」から外に出ない店主の代わりに、異世界のパートを担当する主人公。
つまり、実質的なバディ物。
アレッタは、差別されている魔族の娘。
けれど、週一の「洋食のねこや」を楽しみにする常連は、異世界のVIPが多い。
そのネットワークで、変わっていく生活。
店主は、完成されたキャラ。
それだけに、行き倒れたアレッタの再出発が、もう1つの醍醐味♪
同じジャンルで大きな差がついた理由
異世界居酒屋「のぶ」は670万部を超えたが、『異世界食堂』は110万部。
シリーズ累計で大きな差がついた理由は、以下の通り。
- 店主がモブかどうか
- 異世界に対してのスタンスの差
- 大勢に馴染みがある分野か?
- メディアとしての露出の差
異世界居酒屋「のぶ」の大将には、矢澤信之という名前。
いっぽう、『異世界食堂』は店主でしかなく、モブのまま。
どれだけ描いても、名無しに愛着は湧きません。
やはり、名前をつけるべきでした。
街の一角でどんどん影響を強めて、現地と馴染んでいく、異世界居酒屋「のぶ」。
ですが、『異世界食堂』は完全に隔離され、どこまでも他人事。
訪れた客が美食で癒され、勝手に救われるだけ。
「洋食のねこや」である必要性が薄く、店主も世間話をしません。
日本の居酒屋は、江戸時代から続く、庶民文化の1つ。
大将とシノブの関係は、昔ながらの義理人情であり、良い意味で生々しい。
いっぽう、「洋食のねこや」は上品で取っつきにくく、店主がモブ。
異世界居酒屋「のぶ」は、WOWOWでドラマ化。
2023年にSeason3が放映され、アニメを見ない層にも響きました。
実写ドラマにしやすい題材にしたことでの、先行者利益!
『異世界食堂』は、同じ異世界グルメで避けなければいけない部分が多く、売れ筋をとられたままの商業化と言えなくもありません。
料理を作るには店が必要不可欠
ラノベであっても、説得力が必要!
店で調理することは、どのような意味を持つのか?
屋台は設置と撤収だけで数時間コース
リアルの屋台は、移動と設置だけで数時間。
片付けと撤収もあるから、2倍の労力!
そのうえ、仕込み、厨房と棚、食材や酒、冷やすための氷、ガスや業務用コンロを準備しなければいけない。
雨が降る日、夏の暑さ、冬の寒さと、挙げていけばキリがありません。
しかし、現代でアウトドアを気軽に味わえるため、常連も多い。
基本的にワンマンだから、食器洗いを含めて、いくつかの調理を同時に進める。
今はどこでも食べられるため、名物キャラになること、SNSによる告知も。
帰宅後も、片付け、仕入れと下ごしらえ、帳簿付けや経営戦略、屋台のメンテ……。
重労働のため、「いつまで続けるのか?」という悩みが尽きない。
自治体からの営業許可を失えば、あっさりと廃業です。
屋台の料理は常に全力
屋台は、広い歩道の端で。
冷蔵庫もありますが、食材を手でさわる場合もあり、外に置きっぱなしにする時間も。
それゆえ、必ず焼くか、煮込む。
常連が通うほどの屋台は、一品料理でも凝っています。
複数のオーダーをさばく光景が、芸術のよう。
その合間にトークを欠かさず、また来てもらえるように工夫。
主力はラーメンですが、焼きそば、おでんと、定番メニューを網羅。
儲けになるのは酒で、それらを搭載した重量はかなりのもの。
車でクーラーボックスと酒を運び、それとは別に屋台も移動させるケースも。
少しでも快適になるよう、車道と接している側は、簡易的に組み立てる壁。
それらを取り外し、内部と上、両側に縛り付けた屋台は、見ているだけで重そう。
逃げられない店は地元と一蓮托生
広くて快適な厨房と、カウンター席を含めた、多くの客を収容できる店。
店主であれば、誰に憚ることなく、自分の料理を出せる。
けれど、不動産でメシを食えるだけの運営となれば、逃げ場なし!
商店街の一員となり、地元の付き合いや、選挙活動に加わる。
すべて自己責任になる自営業は、コミュニティの相互扶助や、顔が利く先生、警察との付き合いが後ろ盾。
『異世界食堂』は、客の厳選と店内にいる用心棒の黒のおかげで、異世界との接点は最小限。
わずらわしい部分を省き、美食による癒し、問題解決をクローズアップ。
いっぽう、異世界居酒屋「のぶ」は、地元民との関係が深く、泥臭いエピソードも多い。
飲食店は性善説に基づいた運営
料理を提供する飲食店は、性善説によって運営されます。
客や関係者に支持されてこそ、初めて成り立つ。
嫌がらせをされた時点で終わり
お金を払う客が来てくれてこそ、経営が成り立ちます。
もしも、嫌がらせをする連中が来たら……。
難癖をつけての粘着や、接客や料理ができないほどの演説や居座り。
その手口で「みかじめ料」を徴収していたのが、ヤクザです。
スマホアプリを通しての評判も、無視できません。
噂によるネガティブキャンペーンを受ければ、客足が途絶えて、一巻の終わり。
飲食店だった物件を買っても、初期費用で大きな借金をする。
常連を作り、半年でやっと黒字にできるのが、この稼業。
3年後に経営している割合は、50%ぐらい。
近所や同業者と足並みを揃えての保身
新規がどんどんやってくる、人気の観光地。
それは、ごく一部。
足繫く通ってくれるのは、周りに住んでいる地元民です。
同業者と足並みを揃えなくては、前述した嫌がらせに対抗できず。
逃げ場のない店を守るため、団結せざるを得ません。
並行して、仕入れの見直し、修繕や新しい設備の導入。
新メニューであれば、同業者をリサーチしたあとで試行錯誤。
SNSと顔を合わせての宣伝、どちらも欠かせない。
それですら、工場で大量生産のレトルトや、常温のまま保存するハンバーガーに敗北。
選択肢が多い現代は、まさに修羅の道!
店の前を通りがかった人々の口に、料理を突っ込むわけにもいかず。
食堂を描くためにはヘイト管理が命
『小説家になろう』で連載された、2つの食堂モノ。
どちらも、飲食店でありがちなトラブルを回避しています。
言い換えれば、ヘイト管理が上手い!
異世界居酒屋「のぶ」は地元民が善良で、悪役と早めに和解するか、因果応報。
店を壊される展開はなく、丸く収めている。
異世界の日常で、濃厚な人間ドラマを見られます。
『異世界食堂』は、現代の描写で店主に十分な腕があると示す。
玄関ドアだけ異世界にランダムで出現するから、チンピラが入ってくる可能性は低い。
店から出ることなく、様々なキャラに料理を振る舞える。
どちらも相手が文明的に劣っている異世界ゆえ、美食というチートで優位に立つ。
なろうのテンプレとして不向き
異世界グルメは、大きなジャンル。
しかし、代表作2つがあるのに、テンプレとしての後継はない。
店主にふさわしいのは中年男
主人公は、自分の意志で動く必要があります。
その店を決められる立場で、上手い料理を作れるだけの修行が必須。
異世界居酒屋「のぶ」と『異世界食堂』は、どちらも条件を満たしている。
修行といえば、早くて10年。
店を持てるだけの借金を背負うか、譲り受けるにしても、オッサンであることが大事!
フィクションでも、説得力がないと白けるだけ。
テンプレとして、女子高生が料理するような派生も。
けれど、鳴かず飛ばずでランキング上位になれず、いつの間にか消去。
異世界転移、転生だろうと、小娘が荒くれ者の相手をできるわけがない。
料理を食べてもらい、お金を払ってもらうという、受け身。
若い女が客に媚びるなら、それは夜のお店でしかない。
荒事と恋愛はノーサンキュー!
成功した2つを見ると、店内での荒事と恋愛がないことに気づく。
だからこそ、同じ店で落ち着ける!
逃げ場がないのは、読者、視聴者も同じこと……。
異世界居酒屋「のぶ」と『異世界食堂』は、それぞれに看板娘。
店を切り盛りしている主人公は事務的に接して、彼女も仕事をするのみ。
勘違いによるラブコメも、悪人がいない決着へ。
料理人は料理をするべきであって、戦う者ではない。
悪をくじき、弱きを助けるのならば、冒険譚だ。
野営で食事を作るのは別として、料理人は店にいることが大事。
主人公ですら、恋愛NG!
店は料理を味わう場所であって、ナンパする場所にあらず。
性欲と食欲は、どちらかにするべき。
追うべきテーマを増やしたら、せっかくの雰囲気がぶち壊しに!?
暴力が日常のなろうとは相性が悪い
チンピラが暴力を振るい、悪徳貴族や商人が全てを奪う。
世紀末より酷い世界は、のんきに飲食店をやっていられる環境ではなく……。
なろうテンプレは、現代の飲食店と相性が悪すぎる!
出した料理に難癖をつけられただけで、商売にならないのに……。
異世界居酒屋「のぶ」と『異世界食堂』は、異世界ファンタジーと折り合いをつけた。
現代の食堂で、これを崩すのは不可能。
チートならば、ネット通販の『とんでもスキルで異世界放浪メシ』、現代と行き来してレトルト無双する『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』が最適解です。
一から作ることに執着しなければ、温めるだけの完成品か、切った食材を焼くだけで十分。
暴力で奪われるファンタジー世界で暮らすなら、それに見合ったスタイルが必要!