おっさん剣聖が通用するのは一度だけ?結局はコミカライズが全て!

中世ファンタジーで寿命となりそうな、アラフォー!
片田舎にいたベリル・ガーデナントは、剣であらゆる敵を打ち倒す。
かつての教え子と出会い、思わぬ騒動に……。

漫画が爆売れした理由3つ

シリーズ累計800万部という、圧倒的な売上!
その理由をご説明いたします。

なろう臭さをできるだけ消したから

異世界ファンタジーの主流は、追放ざまぁ!
チートな主人公が、最初のパーティー、実家、学院から、無能として追放されます。
ただし、そいつらは必ず報復されて、奴隷、または八つ裂き。

つかみが全てのWEB小説で、完成形の1つ。
ただ、このテンプレで解像度を上げていくと、狂気の世界になりがち……。

追放のための追放。
ツッコミどころ満載のセリフで、主人公が痛めつけられる。
理解できない悪役は、「ざまぁ!」の対象ではなく、見ていて怖いだけ。

『片田舎のおっさん、剣聖になる 〜ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件〜』は、ベリル・ガーデナントが剣術道場にいることで回避。
優秀な漫画家によって「なろう臭さ」がなくなり、ジャンプ系と並ぶように!

アラフォー世代に刺さったから

2025年のアラフォーは、氷河期世代!
バブル景気を知りながら、就職でハシゴを外された……。

彼らは鬱屈うっくつしており、同じ年代が自覚していない才能を発揮することに喜んだ。
ベリル・ガーデナントになったつもりで、束の間のなぐさめへ。

学校に通っている男子と、オッサン好きな女性にも、受けました。

メインの購買層は、アラフォー世代でしょう。
正社員になりにくくても、コミックを揃えるぐらいのお金はあります。

剣術というシンプルな戦闘だから

忘れてはいけないのが、剣術による戦い!
3つの理由で、これが出発点。

日本には刀があり、全盛期には100を超える流派。
柳生新陰流やぎゅうしんかげりゅう一刀流いっとうりゅうなどの大手が残り、未来を目指しています。
比較的安全にやれる剣道で、義務教育を受ければ、誰もが竹刀しないを握る。

だから、剣術に馴染みがあります。
西洋の騎士がやっていた剣は、だいぶ違いますが……。

『小説家になろう』は、一般とズレた感覚。
しかし、剣術にこだわったことで、なろう臭さを消しやすくなった。

チートなしの剣術だから成功

成功した理由は、3つ!
コミックの人気が高いものの、原則的に変わらず。

スキルや魔法よりも共感させやすい

なろうでよくある、スキルと魔法。
書きやすい反面、「それだけで説明が終わる」というデメリットも……。

なろうは義務教育ではないため、一般人は「スキル? ステータス?」と混乱する。
今の若者がRPGを遊んでいるとは限らず、馴染みにくい。

おっさん剣聖は、木剣による技。
その剣戟けんげきに興奮して、「どうなるんだ!?」と思えます。
もしもスキルや魔法だったら、瞬殺するだけ。

相手の攻撃をかわし、カウンターで反撃。
あるいは、木剣で受け流しつつ、隙ができるのを待つ。
「俺のようなオッサンが……」と自虐的だが、バトルは見応えあり!

おっさんであることの説得力

経験を積んだことで、チートにはない、納得できる強さ。
片田舎のおっさんには、そう思わせるだけの余地があります。

原作も、なろうテンプレとして優秀!
一人称で読みやすく、不自然なヘイト役に頼らず、パッとしない片田舎から王都へ。
「対戦した相手を教導する」という目的ゆえ、一方的に叩きのめさず。

強引な対戦もありますが、弱い者イジメではなく、対等のバトル。
おっさん主人公でネガティブは、わりと難しい分野ですが、上手く調理しています。

追放するために追放という、頭の悪い展開がないから、すんなり読める。
なろうテンプレを守っているのは、ランキング対策。
上位に入らなければ書籍化できないから、これは仕方ない……。

剣で叩きのめして序列を分からせる

木剣で、正々堂々の戦い。
冷静に見極めつつ、大怪我をさせない配慮まで……。

コミック版は、なろう臭さを消した。
おかげで、学生から主人公と同じアラフォーまでの、幅広い購買層へ。

美少女ハーレムは、いつものこと。
しかし、木剣による真剣勝負で叩きのめすから、だいたい許せる。
神様チートや転生ではなく、研鑽けんさんによる力。

強いオスが魅力的なメスをはべらせるのは、当然!
倒された男は序列をわきまえて、応援するファンに。
それでも、ベリル・ガーデナントは剣術の達人だから、OK!

おっさん剣聖はどうして叩かれる?

美少女、美女に慕われて、ハーレムを築いているから。
NTRを防ぐため、分からせた男は忠実な部下、あるいは支援者に……。

男の弟子がいない不思議

原作では、男の弟子もいます。
ただし、家族連れのランドリド・パトルロックのように、ハーレムを脅かさない。

メインイベントにいる男キャラは、剣で叩きのめした後か、立場や妻がいる。
つまり、女を寝取らない。

隙があるヒロインは、『小説家になろう』で需要がなく、読者を不安にさせるから……。

「描写されていないところで、ヒロインが抱かれる?」
読者が心配するのは、それ以前の段階。
他の男に思いを寄せただけで、アウト判定!
「ユニコオオオォォォ―ン!」と叫びそうな読者のために、絶対に不可能な状態へ。

逆算するとロリコンに思える

ベリル・ガーデナントは、40代半ば。
高校生、大学生に見えるヒロインは、教え子のときにロリ。

『片田舎のおっさん、剣聖になる』は、現実のアラフォー男性を狙っています。
同じ境遇にしつつも、美少女、美女に囲まれ、本当の実力を発揮する。
異世界ファンタジーで発情していないから、ギリギリ許された?

だが、「教え子のときから目をつけていたのでは?」と思われても、仕方ない。

スタートから「片田舎の剣聖」と呼ばれており、出オチ。
自己評価が低すぎるものの、貴族の子弟していも通ってるなら、ふつうは縁談がある。
領主や騎士団がスカウトしつつ婿養子で取り込まないのは、不自然。
アラフォーなら、子供が数人いて、上の子は剣で素振りをしているぐらい。

ベルトコンベアで運ばれるだけ

おっさんは、ひたすらに受け身!
騎士団長のアリューシア・シトラスが道場を訊ねて、王命による連行です。
アラフォーでありながら、現代のフリーターよりも身軽。

中世ぐらいの剣術道場は、『シグルイ』の虎眼流こがんりゅうと同じ。
ベリルが道場破りを倒す場面もあり、地元では名士。
次の道場主である師範代だから、若い村娘が言い寄り、下位貴族は娘をあてがう。
そもそも、江戸時代ぐらいは平均寿命が50代で、アラフォーは晩年。

ゴリゴリの、なろうテンプレ。
ランキング対策で、そこは仕方ありませんが……。

ベルトコンベアで運ばれていく、ベリル・ガーデナント。
責任を負わず、相手がつっかかってくるから、やむなく自衛。
ヒロインが騒ぐだけで、厳密にはハーレムですらない。

なろう枠として上出来のアニメ

大量生産のアニメで、群を抜いた完成度。
コミック版ではないことから物議を醸しましたが、それでも上出来。

低予算のなろう枠として頑張った

多くの人が、コミック版を見たかった?
しかし、『小説家になろう』でランキング上位となった原作も負けていません。

なろう枠のアニメは、低予算。
担当する制作会社、スタッフも、その金額に見合ったもの。

「コミック版と同じシーンを使えない」という制約で、よく頑張りました。
一対一の剣戟けんげきは、見応えがあります。

おっさんハーレム?
はい、そうです!
中年男がヒロインに囲まれ、ぼやきつつも相手を叩きのめし、キャーキャー言われる話。

異世界のハーレムであることが第一

『小説家になろう』のランキング上位になれば、書籍化、コミカライズ、アニメ化。
集中投稿で駆け上がり、手応えがなければ、すぐに消去。
リセマラの末に、『片田舎のおっさん、剣聖になる』も……。

WEB小説は、1話2,000文字。
待ち時間でサッと読み切れて、考えることなく楽しめるか?
スタートでランキング入りしなければ、無意味。

読者が求めているのは、主人公との同化!
どこまでも主人公に優しく、ストレスを感じさせる要素をなくす。
テンプレを守らなければ、ランキングに入れない。

なろうで読者ファーストを貫けば、主人公だけを見ているヒロインが増える。
彼女たちと向き合い、1人を選ぶか、いっそ全員を囲うこともなく、責任すら負わない。
これが、なろうハーレム。

キャラを動かしつつ演出でごまかす

『Fate/Zero』のような、瞬きすら許されない戦闘。
あるいは、劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel]』であった、宝具による応酬。
同じレベルを、なろう枠に求めないでください。

与えられた環境で、『片田舎のおっさん、剣聖になる』のスタッフは最大限の仕事をしました。

木剣による打ち合いで、西洋剣術。
左右の遠心力で叩きつけるか、正面からの突き。
丁寧に避けて、受け流しつつも、相手の姿勢が崩れている時にカウンター。
相手の足を止めるローキック、片手による掴みと、総合格闘技だ。

なるべく動かさないよう、演出でごまかしている場面も。
動かせない納期があるテレビアニメに、必要なテクニック♪

書籍化の前にもう決まっている

前述したように、「なろうランキングの上位」が最優先!
けれど、『片田舎のおっさん、剣聖になる』は、売れるだけの要素がありました。

「ステータスオープン!」で終了

なろう名物、ステータスオープン。
『転生したらスライムだった件』からのテンプレ。
けれど、2013年の『ありふれた職業で世界最強』を最後に、打ち切りの原因へ……。

RPGのステータスは、とても便利。
作家が説明しなくても事足りるから、手抜きの温床にも?
これは、無視できない問題!

ステータスに表示されたことは、絶対!
後付けで「無敵」のようなスキルを出せば、どんなピンチでも大逆転。
そうなれば、読者は白けます。

ナーロッパにこのステータスが加わり、殴るためのキャラが出るだけ。
そして、主人公をひたすらに褒めたたえる信者か、ヒロイン。
何の感動もなく、打ち切りへ一直線!

転生や魔法だったら800万部はない

『ソードアート・オンライン』が成功したのは、魔法をなくしたから。
スキルにも制限をつけて、それを出し抜く面白さ!
アインクラッド編をシンプルにしたことで、デスゲームの面白さが際立ちました。

『片田舎のおっさん、剣聖になる』が成功したのも、それと同じ。
魔法はあるものの、誰でも身につく剣術と比べて使用者が少なく、数の暴力にかてない。
ベリルが指導することの価値は揺るがず、剣で優劣をつける。
異世界転生でないから、チートはなく、純粋な実力です。

コミック版は、マイルドな『シグルイ』という演出。
なろう臭さを抜きつつ、剣を握ったら人が変わる『剣客商売』へ……。

シリーズ累計、800万部。
なろうの限界を突破した『片田舎のおっさん』で、コミックの完成度を知りつつも言いたい。
「素晴らしい原作があってこそ、である!」と。

コミック版でも隠しきれない何か

剣を握れば、人が変わったように敵を倒す。
最強系の1つで、その源流は『魔法科高校の劣等生』と言える。
けれど、お兄様は感情を制限されており、ハーレムにならず。
親しいサブヒロインを除き、他の男子とのカップリングへ。

いっぽう、ベリルは「嫁に来るやつがいない」と、女を抱く意思はあります。

おっさんが謙遜けんそんしたまま、ひたすらに持ち上げられる。
ヒロインに囲まれて、「すごい!」と連呼されても、剣で違いを見せつけるから大丈夫♪
性欲があるものの、わずかでも欲情したら終了。

ずらりと並んだヒロインに、おっさん1人。
「ハーレムじゃない!」と言い切るには無理があって、卑屈ひくつであることも不可解。
それでも、爵位や政略結婚を出さず、剣術バカでいるのみ。
「俺なんかより、同年代でいい男とくっつけ」とさとすのが正解であろうと、それもしない。
責任を取らないハーレムは、どこまでも続く。