酷評された異世界スマホをもう一度!真のハーレムは意外に少ない?

『異世界はスマートフォンとともに。』は、なろう全盛期にアニメ化!
どこかで見たようなヒロインが集まり、ハーレムを築く。
『転生したらスライムだった件』から続く異世界転生は、1つの定義も変えた!?

「小説家になろう」らしい名作

素人が投稿する、小説サイト。
『小説家になろう』は、ラノベ作家としてデビュー、印税生活へ……。

ノーストレスの理想郷

望月もちづき冬夜とうやは、ギャグのような流れで異世界転生。
「スマホを使えるようにして!」と願ったことで、トントン拍子に金と女を得る?

アニメ一期はダイジェストのように進み、テンポが良かった。
けれど、ピンチがなく、どこへ行っても誰に会っても、ただ認められる。

ヒロインは増えていくも、女同士で張り合うこともなく……。

チート転生ゆえ、スマホも使うが、基本的に冬夜のスペックでごり押し。
はべっている女たちは、彼のチアガール。
鬱展開うつてんかいがなく、WEB連載は書籍からアニメまで進みました。

アニメ放送で賛否両論

『転スラ』によって周知された、異世界転生。
けれど、『異世界スマホ』はRTAのようなスピードで進み、苦しい場面がゼロ!
アニメから入った新規は、首をひねるだけ。

低予算アニメの典型ですが、私は「良い仕事をした」という評価。
以下に、その理由を挙げます。

  • 1シーンに3人以上が登場しても、キャラの等身、身長差が一定
  • 立ち位置による遠近が、乱れにくい
  • カメラワークのズームアウト、パン、ティルトが、丁寧
  • BGM、効果音、OP・EDの音響は、標準以上
  • ヒロインの魅せ方が上手い

ヒロインが多くても、静止画のカメラワークで省エネ!
顔の線は、崩れていない。
声優の演技と合わさり、常に可愛いラインを維持♪

実は300万部の大ヒット!

『異世界はスマートフォンとともに。』は、シリーズ累計300万部。
中堅のヒットで、同じラインには以下の作品があります。

  • 冴えない彼女の育てかた
  • はたらく魔王さま!
  • ストライク・ザ・ブラッド
  • 青春ブタ野郎
  • スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました

こうして見ると、驚くばかり!
けれど、印税の他に版権収入もあって、そちらで大きな差がつく。

  • アニメ放送・OVA
  • ソシャゲ・家庭用ゲーム
  • コラボ(カフェ・企画)
  • パチスロ台
  • グッズ(抱き枕、フィギュアなど)

それらを含めると、『ストライク・ザ・ブラッド』が圧倒的。
しかし、「なろうテンプレ」として、『異世界スマホ』も健闘!

成りきる主人公として完璧

望月冬夜は、読者のアバター!
だから、自己主張があってはいけないし、無害でなくては……。

『なろう』は自分が主人公ポジ

WEB小説は、インパクト勝負!
第1話でテンプレに逆らったが最後、流し読みからの1分で離脱。
集中投稿でランキング上位に入り、それを維持する。

『異世界スマホ』は、ライブ感とスタートダッシュが全ての業界で、勝者。
つまるところ、読者が気持ち良くなるエピソードの詰め合わせ。

望月冬夜は読者の入れ物だから、感情や哲学がないほど、都合がいい。
テンプレに説明はいらず、会話がズラズラと並んでいてもOK!
この部分は、大ヒットした『とんでもスキルで異世界放浪メシ』も、例外にあらず。

寝る前に妄想するような、自分が神になったような万能感。
それが、『小説家になろう』の本質です。

ハーレム公言は他になし

望月冬夜は、「みんなを愛する!」と、ハーレムを公言。
なろう主人公では、他にいません。

ヒロインたちが主人公を取り合い、それを本人が「まあまあ……」となだめる。
それは、星の数ほど。
しかしながら、責任を取らず!
ハーレムに憧れるも責任を取りたくない、男性のニーズに応えた結果。

だから、『異世界スマホ』の後継は見つからず。

少しでも売れたら、テンプレとして真似する界隈かいわいで、これは異例。
それだけ、「責任を取りたくないが、女にチヤホヤされたい」という願いが大半。
これは、『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』の衛宮えみや士郎しろうですら、同じ。

マルチメディア展開で成功した

同時期のアニメ放送は、名作ぞろい!
まさに、『小説家になろう』の全盛期でした。

  • この素晴らしい世界に祝福を!
  • Re:ゼロから始める異世界生活

いっぽう、『異世界スマホ』は何の苦労もせず、ただ美少女が増えていく。
ネットでは散々に叩かれ、「スマホ太郎」と命名されました。

しかし、低予算の『なろう』枠として、確実に上澄み!

ハーレムの美少女たちを可愛く描いており、キャラグッズも一定の売上。
他の「なろうテンプレ」とは、一線をかくします。
2023年にアニメ二期が放映されて、2025年に原作ラノベもWEB版が完結。
何だかんだで、10年を戦えたIP(知的財産)!

アニメと小説は距離感が違う

『異世界はスマートフォンとともに。』が炎上したのは、アニメ化で。
宣伝のPV(プロモーションビデオ)を流すから、嫌でも目につく。

強制的に傍観者となるアニメ

アニメでは、望月冬夜が出ます。
傍観者になったことで、ハーレムを客観視させられる。
そのため、『なろう』を知らない層はびっくり仰天!

広く支持される主人公は、自己犠牲的。
あるいは、大きな悪とぶつけてのカタルシス。
呼吸をするようにハーレムを築く『異世界スマホ』が拒絶されるのは、当たり前。

WEBからついてきた、筋金入りの「なろうテンプレ」を親しむ読者は、違う。
「ようやく、動いているキャラを見られた!」と、ご満悦。
アンチに対しても攻撃的で、ひたすらに擁護する。

初見のアニメ勢は、まったく共感できず、ツッコミどころ満載。
なろう勢は、推しの出番が多いかどうかで、一喜一憂。
後者も「自分が成りきる」だから、主人公の冬夜はどうでもいい。

刺さるヒロインが1人いればいい

『異世界スマホ』は、美少女に囲まれて、イチャイチャするだけ。
読者や視聴者が「このヒロイン、いいな!」と思えば、大勝利。

なろうアニメの悪い例として、挙げられる。
けれど、そもそも、素人が書いたライブ感に期待するべきではない。

ヒロイン5人のラノベは、一時期に流行りました。
だが、男主人公に好感を持たせようとしたら、鈍感難聴か、女と向き合えないだけ。
その点に限っては、「全員を愛する!」と宣言した望月冬夜のほうが上。

異世界転生とチートは、『転スラ』からのお家芸。
ハーレムを完成させた『異世界スマホ』は、金字塔の1つになりました。

アニメは商業的に大成功

『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』のアニメは、高評価でした。
けれど、劇場版ぐらいにお金と手間をかけても、言うほど伸びず。
「なろうテンプレ」に伸びしろがなく、以後の『アルファポリス』は「紙芝居のようなアニメで、宣伝代わりに使う」という低予算へ舵を切った。

『異世界スマホ』のアニメは、前述したように、低予算ながら完成度が高い。
原作、コミックの宣伝として考えるなら、最高です!

そもそも、チート転生者がハーレムを築くだけ。
大義がないから、格好つけずに自然体でいたほうが好印象。
ハーレムを描いている以上、それに嫌悪感を持つ人が目立つのは仕方ない。

声が大きい人への忖度そんたくは、百害あって一利なし。
お金を出してくれる人に向き合い、彼らが望むものを提供すればいい。

ハーレムは描きにくいテーマ

一夫一妻が宗教的にも支持されていて、ハーレムは異端になりやすい。
けれど、男のあこがれ!

ストブラは受け入れられた

ハーレムで大成功したのが、『ストライク・ザ・ブラッド』。
あかつき古城こじょうは第四真祖の力によって日常を失い、高校生でありながら美少女に囲まれる。

男性向けであることは、間違いない。
だが、『とある魔術の禁書目録』のような路線で、「ヴァンパイアに血を吸われる美少女」としたから比較的マイルド。

オカルト系として、派手な異能バトルが続く。
「血を吸わなければ、眷属けんぞくが言うことを聞かない!」という事情ゆえ、致し方なし。

マルチメディアを見据えた設計で、「ハンコ絵」と称されながらも、描きやすい。
OVAに移ってまで完結したことから、人気の高さをうかがえる。

ハーレムを真面目に描くほど反発される

現代社会で、チート、異能なし。
蕎麦屋そばやで「抜き」を頼めるように、変則的な注文と同じ。
しかし、リアルと同じにすれば、見る側のハードルも上がる!

『School Days』は、全国の伊藤誠さんに風評被害をもたらした。
アニメ版は「最低最悪な男として描こう!」と、原作のエロゲより悪人へ。
なお、マルチエンディングでは、1人を選ぶ、あるいは円満なハーレムエンドも。

2025年の『千歳くんはラムネ瓶のなか』も、物議をかもした。
主人公が陽キャである証明としての美少女ハーレムで、特に意味なし。
何をやっても周りに肯定される展開は、「なろうテンプレ」を彷彿ほうふつとさせる。

現実と錯覚しそうな世界観でハーレムにすると、読者や視聴者に拒絶される。
関係者が破滅する昼ドラとしては、怖いもの見たさがあるでしょうけど。

異世界スマホは唯一のストレート

先入観なしで『異世界はスマートフォンとともに。』を見返せば、わりと面白い?
望月冬夜は、良くも悪くも無害で、格好つけても嫌味に感じず。

ちゃんと意思確認したうえのハーレムだから、ヒロインたちと冬夜は対等。
怒るし、文句も言う。
それに対して、冬夜も向き合う。

スマホ抜きでも、冬夜の魔法で瞬殺。
モンスターの攻撃で、ハーレムメンバーの服が溶けるぐらい。

「異世界で、ほのぼのとしたハーレムを楽しみたい!」
このニーズを満たしてくれる『異世界スマホ』は、唯一無二♪

大成功したハーレム作品を考察

女たちに奉仕されて、好きに抱けるのは、やはり夢の1つ。
最後に、商業的にメジャーな路線をご紹介!

男女比逆転でラブコメに徹する

女子の性欲は、男子と違う。
ゆえに、「他の男子がいない」という男女比逆転が、よく用いられる。

『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』は、IS学園でしっかり再現。
織斑おりむら一夏いちかが、「男性で唯一のIS適正」として、全寮制の女子校でラブコメ。

ISは、「女尊男卑」と明言されているのに、全員バカ。
学園の外を描かないので、シリアス展開にならず。
最初から最後まで、ギャグ!

作家の経歴から、美少女ゲームの脚本をそのままラノベにした雰囲気。
ハーレムであるのに、一夏は男女から嫌われていない主人公。
個人的には、『異世界スマホ』と同じカテゴリ。

意味のあるハーレムは舞台装置

ハーレムに必然性をもたすには、男性が希少になった世界。
または、現実ではないVR(バーチャル・リアリティ)で描く。

  • 終末のハーレム
  • 恋愛フロップス

『終末のハーレム』は、コールドスリープ後に、男性が数えるほどしかない未来。
種馬になることを強いられて、ハーレムへ。
iOSアプリの配信禁止や、一部の自治体における有害図書指定にも。
しかし、2023年に累計発行部数900万部で、WEB連載らしい名作!

『恋愛フロップス』のほうは、主人公に関係したミステリーでもあります。

主人公を不憫にすることが必須

『終末のハーレム』は、一般向けであるのに、よく完走した!
けれど、世論が言葉狩りでAI監視も強まっている2025年には、リスクが高い。
『SPY×FAMILY』という、正反対による大ヒットに、時代を感じる。

『氷菓』のような、クラシックな学園青春。
結果的にハーレムでも許される、『負けヒロインが多すぎる!』の路線。
あるいは、『青春ブタ野郎』のように一途な主人公が、支持される。
『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』にしても、ハーレムっぽいだけ……。

男主人公を不憫ふびんにすることで、ユーザーに認めてもらう。
ヒロインと向き合い、命懸けで助ける。
これが鉄則になった以上、恵まれたハーレムは18禁に残るのみ!

複数の美少女、美女をはべらせるのは、その理由が難しい。
一時的にグループを形成したら、どこへ向かうのか?
しかし、どれだけハーレムを否定しようが、人間もまた動物の1つ。