なろう小説の代名詞となった、『転生したらスライムだった件』。
可愛らしいキャラが動き続けて、国民的なアニメである『ドラえもん』と並んだ!?
スマホの電子書籍が売れまくる時代にも、根強く支持される理由は?
売れているから売れる現状
結論から言うと、「売れているから売れる」という状況です。
ギャグみたいですが、現実に他なりません。
売上ランキングで常に上位
何でもネットで調べて、その手段はスマホ!
検索結果の1ページ目やランキング上位にいるものほど、信用されます。
『転生したらスライムだった件』は、年間の売上ランキングで常にトップクラス。
だから、安心して買えます!
そうです。
前述したように、「売れているから、もっと売れる」という構図。
誤魔化しの利かない年間ランキングとあれば、それを疑う人はいません。
転スラを否定する気はないため、怒らないで欲しいのですが。
「ハンバーガーとコーラは、世界で一番売れている。つまり、一番美味いんだ!」
無意識にそう考えた消費者が、転スラを買っていくのです。
ネットの評判も上々
肝心のネットは、どうか?
……最高の評価に決まっています!
最大手の『小説家になろう』で、累計ランキングトップですよ?
そりゃ、高いでしょう。
マルチメディア展開でも、その世界観、キャラを損なうことなく、上手に処理しています。
媒体によって最適な演出が変わるため、その点でも愛されている作品。
剣と魔法がある異世界ファンタジーで、セクシャルな場面がないため、叩かれにくい作品です。
現代に近い『魔法科高校の劣等生』がアンチスレを伸ばしているのとは、対照的。
出版社が全力でプッシュしている
GCノベルズで書籍化して、コミックは講談社。
大手で扱われるのは100万部を超えるために必須ですが、転スラはそれに留まらず!
『転生したらスライムだった件』のコミックだらけ。
もはや「転スラ」と呼ぶべき雑誌、月刊少年シリウスまで……。
身も蓋もありませんが、出版社は何が売れてもいいんですよ?
『透け透けワンタッチ♪』が1,000万部なら、そっちに全力を出します。
エロは制限がキツく、購買層が少ないから、ないですけど。
転スラが売れた!
もっと売るために、アニメを続けるぞ! 劇場版もやるぞ!
え、舞台? どんどん、やってくれ!
ゲームも作るぞ! コラボで話題性もばっちり!
他のラノベ? 知らん!!
出版社の本音は、そんなところです。
転スラは時代に求められた
売れた理由を知るためには、時代への理解も必要です。
目立ったテンプレをすり続ける今とは違う、「お? これ、いいな……」と思えた時期。
児童文学になったオバロ
『転生したらスライムだった件』を一言でいえば、「子供に見せられる、なろう」です。
残虐でおどろおどろしい『オーバーロード』を児童向けにしたような安心感。
かなで文庫から、児童書バージョンも発売されています。
下記のターゲットに刺さっているため、本当に強いです!
- 学生から新社会人までの若者
- 中高年
- 児童文学を仕入れている学校、保育所などの機関
他にも、「人外の主人公」「ゲームシステムによる成長」「国の拡大と運営」。
なろうテンプレで、チートを持つ主人公はどんどん成り上がり♪
4,500万部という圧倒的な売上は、ワールドクラスで売れているから。
良い意味で分かりやすく、受け入れやすい物語。
セクシャルな表現がないから安心♪
忘れてはいけないのは、なろう小説でありながら、セクシャルな表現がないこと。
キャラの衣装といった要素を除けば、「主人公がハーレムを築く」という展開がありません。
スライムが擬人化しており、それも女性型。
冴えないオッサンからの異世界転生はフレーバーで、ひたすらに綺麗な主人公。
世界的に見ても叩かれにくく、女性からの人気も上々です。
『魔法科高校の劣等生』のように、今は叩かれにくい主人公と世界観が支持されます。
ラノベで売っているのは、キャラなので……。
リムル=テンペストは、世話になった人や敵の信念について、無下にしません。
担当編集と漫画家に愛された結果
2013~2015年という時期が、実に良かった!
出せば売れたこと、転スラを気に入った編集者が担当してくれたことは、最大の幸運。
今に書籍化、コミカライズ、アニメ化したら、他のなろうに埋もれた可能性が高いです。
ラノベは、原作に過ぎません。
ゆえに、なろうは書籍化と同時にコミカライズされて、後者の売上を狙うのです。
場合によっては、コミックだけの販売。
この点でも、『転生したらスライムだった件』は、なろう史でもっとも恵まれていました。
コンペにより、同じく転スラを愛してやまない漫画家が勝ち抜いたのです。
粗製乱造ではない、愛と実力のあるコミカライズにより、転スラは覇権となりました。
アニメ放送は、そのブースト。
なろう小説の境目になった転スラ
『転生したらスライムだった件』は、大作がひしめくArcadiaからの過渡期。
なろうが躍進していく中で、それらの名作の影響を受けました。
Arcadiaから「小説家になろう」への過渡期
数々の大賞クラスを生み出した小説投稿サイト、Arcadia。
2024年は現状維持がやっとで、『小説家になろう』の独壇場です。
角川の『カクヨム』、なろう書籍化のパイオニアである『アルファポリス』と併せ、なろうの三強。
2000年のネット黎明期は、個人サイトに掲載された小説を紹介するサイトが一般的。
そこで頭角を現したのが、Arcadiaとなろうです。
厳しいユーザーが多いArcadiaは、今では信じられないほどの辛口で、『オーバーロード』『幼女戦記』などを輩出しました。
今では非上場の株式会社となった『小説家になろう』は、『魔法科高校の劣等生』『Re:ゼロから始める異世界生活』『この素晴らしい世界に祝福を!』『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』を商業化する快挙を成し遂げました。
転スラも、この時期に含まれます。
なろうはなろうで、コピペのように増殖し続ける「異世界転生・転移」に悩まされ、ランキングを別にする暴挙に出ましたが、また別の話。
ゲームらしい表現によるチート
転スラが人気になったのは、当時としては斬新な人外が主人公だったこと。
さらに、なろう定番のチートスキルによる成り上がりです。
ゲームらしい表現は、非常に分かりやすい。
コテンパンに叩きのめしたか、リムルの崇拝者だけで作り上げた国だから安心!
大賢者に聞けば、正解を教えてもらえる!
前述しましたが、転スラは典型的な「なろう」であって、オリジナリティで勝負せず。
本当にタイミングが良くて、他の作品がそのポジションに収まった可能性もありました。
運も、実力のうちです。
“先行者利益”
2000年からは、このキーワードを押さえた人が覇権に……。
バカテスと同じで「あったらいいな!」の発想
『バカとテストと召喚獣』は、作家の「こんなのがあったら、いいな!」という発想から。
転スラも、似たような感じです。
チートスキルで周りを従えていきますが、作家の人間性か、わりと真面目です。
ここら辺は、「良い意味で、畑違いによる味が出たな?」と思えます。
Arcadiaの輝く大作を見ていた世代と、奇跡のコラボ。
小説投稿サイトは、PV至上主義。
作家を育てる義務と理念はなく、ただ使い捨てにするだけ!
メジャーな作家ですら、その多くがアニメゲームの脚本か、一般文芸へ逃げたあと。
2024年のなろう界隈には、夢も希望もありません。
一部のプロ作家が残っているぐらいで、「ノーストレスのお粥」のようなテンプレだけ。
まともに書くことは、不可能です。
日本のサブカルを学べる教材
世界的に有名な、日本の漫画とアニメ。
二次元と三次元が同じ外国とは違い、独自の進化を遂げてきました。
世界的に売れるのはコミック
発行部数1億オーバーの作品。
ネットや携帯がなかった頃とはいえ、それらは全てコミック……。
ラノベではありません!
強いて言えば、情報化が進んでいた時代の申し子である『涼宮ハルヒの憂鬱』。
記録的なスピードで、1,000万部を突破しました。
現在のラノベを築き上げた『スレイヤーズ』も、同じく売れた作品です。
しかし、文化や信仰が違う海外では、日本で通用するミームが検討違いに!?
『ドラゴンボール』『NARUTO -ナルト-』『SLAM DUNK』
誰が見ても分かりやすい漫画です。
『転生したらスライムだった件』も、コミカライズの大成功で、その一角となりました。
アニメで宣伝してコミックを売る
『メイドインアビス』は、アニメの大成功で、売上が6倍に!
『転生したらスライムだった件』も、アニメによる宣伝効果は絶大!!
2020年にアニメが乱立しているのは、「アニメで宣伝してコミックを売る」のサイクルだから。
今はスマホで完結しており、就職までパソコンに触らない学生も出てきました。
それゆえ、約10分の動画を見せることが必須。
SNSでバズって、トレンド入りすれば、なお良い!
アニメの制作費は、有料配信での放映権の販売でトントンか、ちょい赤字。
あとは、稼ぐだけ!
もう円盤が売れる時代ではなく、漫画が売れるかどうかが全てです。
売れたら自社の看板として全力プッシュ!
『月が導く異世界道中』は、アニメ2期まで放送して、発行部数が100万部ぐらいアップ!
教科書に載せたいほどの大成功で、3期も決まりました。
扱っているレーベルは、社運を賭けてのプッシュ♪
対して、完璧なクオリティだった、アイドルアニメの『シャインポスト』。
原作の売上につながらず、全てのコンテンツが終了。
まあ、アイドルブームの最後尾として、ガールズバンドへの過渡期でしたが……。
『転生したらスライムだった件』は、なろうの代名詞。
あのオバロですら、単純な売り上げで見れば、その足元にも及びません。
1億が見えているラインは、ちょっと異次元です。
転スラがこけたら、会社が傾くレベルです。
全力プッシュというか、ここまでくると「次代へのアピール」「ブランドを守る」という話。
ラノベ作家は専業の夢を見るか?
転スラの作者は、もう左団扇。
では、他のラノベ作家が、このような夢を見られるのか?
転スラみたいな小説はいらない
『小説家になろう』は、ちょっとでも目立った作品が真似されます。
失格紋とくれば、劣等紋、マイナー紋、ハズレ紋と、大喜利のごとく!
なろうは、素人が同人小説をアップする場所で。
長文のストーリーを書き上げるエロゲはなくなり、ネット黎明期を支えたArcadiaに活気はなく、大手の出版社ですら作家を育てない。
となれば、悪貨が良貨を駆逐するだけ!
集まった連中が結託しての相互評価で、ランキングも形骸化。
さらに、投稿サイトは「ランキングに入らずんば、存在せず」という構造です。
『転スラ』『無職転生』『このすば』の世代がラストで、あとは書籍にするのをためらうレベルが溜まるだけ。
話を戻すと、「似たような作品を書いても、意味はない」という結論。
二番煎じなら、転スラを読みますから。
小説投稿サイトは新人賞になった!?
2024年の投稿サイトは、ランキング上位を目指す、テクニック競争。
なろうテンプレでなければ、スタートラインに立てない。
面白いから読むのでなく、「ランキング上位だから」「高評価だから」で、ダラダラと読むだけ。
今のなろうは、その程度!
『小説家になろう』というタイトル通り、過度な期待をするほうがおかしい。
小説投稿サイトのランキングに入れば、どこかのレーベルに声をかけられます。
コンテストでも、中間選考は突破!
これは、ただの新人賞です。
選考する人の好みに従い、ランキングを攻略することに全力。
読者はお祭り騒ぎで、ただ面白がる。
本を買ってくれるユーザーは、どこにもいません。
少なくとも、無料でなろうを利用している人々の中には……。
いくつものガチャを乗り越える無理ゲー
『転生したらスライムだった件』は、ラノベが成功するためのモデルケース。
以下の条件をすべて満たすことが必要。
- ランキング上位に入る(アップから早いほうがいい)
- 担当編集がついての書籍化
- コミカライズが打ち切りラインを超える
- 100万部のラインで、アニメを成功させてのブースト
コミックが売れないと、終わり!
漫画家ガチャを外したら、新作でコンテストの入賞へ。
当たるまで、繰り返します。
次に、アニメ化で実績豊富なスタジオにやってもらい、なおかつ、バズる!
ランキングガチャ、編集ガチャ、コミカライズガチャ、制作会社ガチャ。
これ、ぜーんぶクリアしてくださいね?
……ラノベ全盛期ならいざ知らず、2020年代でやるのは無理ゲーですけど。