スマホとAIが普及して、世界は新たな段階へ!
『魔法科高校の劣等生』が大ヒットした背景には、気になる事実が?
この監視社会で、私たちは生きていく……。
一億総中流という幻想
バブル経済の名残りは、オープンAIによって終了。
全員が横並びで昇格する社会が、もはや映像の中だけに!?
誰もが報われる時代の終焉
新卒から縁があった会社で頑張れば、終身雇用と年功序列。
『課長島耕作』のように課長から差がつくものの、係長までは保証された。
現場の肉体労働も、若ければ、独立開業の資金を稼ぐ手段。
バブル崩壊から、失われた10年へ……。
けれど、本当の意味でバブルが終わったのは、2010年から。
基本給が高い窓際社員を追い出し、その流れはどんどん激しくなる。
地元を捨てた人による『クレヨンしんちゃん』が、詰んだ。
パッとしない係長の「野原ひろし」は、インドなどの海外駐在か、転職するのみ。
戦後の個人から一族への回帰
『アカギ 〜闇に降り立った天才〜』のように、戦後の復興は仕事だらけ。
無法地帯の側面もあったが、若くて真面目に働けば、何とかなる時代。
バブル崩壊で、クビにしやすい人間から辞めさせる。
家庭を持っていない人、職場で嫌われた人、上司に睨まれた人……。
生まれ育った地元の相互扶助。
先祖代々であれば、本人が食えるぐらいの仕事はある。
けれど、上京して夢破れた人間が戻ったら、その輪に入りづらいまま。
自分を職場に認めさせる人材は、数えるほど。
生存戦略として孤立せず、親戚を含めた一族の助け合いへ回帰する。
破壊ではなく認めさせる
司波達也は、見下される立場からの逆転劇。
第一高校の二科生としての被差別は可愛いもので、本命は四葉家の権力争い。
名家、旧家は、一般人とは違う。
伝統芸能の家元など、物心ついた時から稽古という場合もある。
生まれた以上は、そのルールに従い、自分の役割をこなす。
でなければ、一族から追放されて、家族ぐるみの友人とも縁切り。
達也も、妹の司波深雪と暮らしつつ、四葉家の当主が言うままに動く。
兄妹がお互いを大切に思いつつ、どちらも四葉家の破壊は望まず。
第一高校で立場を築きながら、家の序列についても足掻く。
監視社会における青春
どこにでも監視カメラがあって、AIのリアルタイム判断。
スマホの撮影、録画による告発も含め、息苦しい社会との親和性が高い。
本当の自分が評価されていない
第一高校で、司波達也は劣等生。
しかし、十師族の四葉家に属していて、世界を滅ぼせる魔法を使える。
隠しきれない実力が知られていくにつれ、二科生の達也は見直されていく。
周りの嫉妬、尊敬を巻き込みつつ。
これは、リアルで評価されていない人に魅力的。
よくある構図だが、現代魔法を突き詰めたことでの説得力!
貴族のような振る舞いで、特別感もたっぷり。
家族関係を前面に押し出したことが、覇権になった理由の1つ。
入学時のウィード差別から、学校行事をこなしつつの逆転劇♪
「四葉家からのミッション」という裏稼業も並行して、スパイ的な面白さも。
最強にして最弱
主人公の司波達也は、生まれながらに「分解と再成」のBS魔法(超能力)。
その代償は大きく、ある方法でそれを緩和させた。
最強にして、最弱!
『魔法科高校の劣等生』は、矛盾する設定を上手く扱っている。
現代魔法を使うためには、とっさの選択や、最適化したCADの準備も大事。
物理法則に基づいた改変だから、理系の知識という下地も。
達也は、魔法理論の成績がトップクラス。
でも、魔法技能師としての実力を考えたら、たいした価値がない。
マテリアル・バースト(質量爆散)と合わせれば、周りの反応にニヤニヤできる。
異世界恋愛との親和性
カップリングが多く、エピソードで注目された女子はどんどん相手を見つける。
一部の女子は取り巻きのような扱いだが、司波達也のハーレム感は薄い。
達也と司波深雪を動かしにくい関係で、サブキャラの恋愛が目立つ。
近未来の日本が舞台であるものの、異世界のような雰囲気……。
その意味では、もっとも成功した異世界恋愛?
司波の兄妹も、「四葉家でどういう立場になるか?」を問われる。
主人公らしい見せ場があり、サブキャラとは別格の扱い。
誰もがパートナーを大切にして、浮気と思われる行動をせず。
一条将輝などのキャラで女性人気もあるから、『魔法科高校の劣等生』は長い。
2,000万部オーバーの理由3つ
「スクールマギクス」と銘打っているように、ただの学園モノじゃない。
これは、ハードSF!
リアルに判断する時代
平成の中盤までは、フィクションのお約束。
理不尽な暴力ヒロイン、わざとらしい道化が、よく見られた。
令和に差し掛かり、大ヒットするアニメの種類が変わってくる……。
それは、もう1つの現実であること!
安易なサービスシーンを排したスクールライフだからこそ、IPコンテンツへ。
お金を出して、何度も読み返す、あるいは、視聴する。
その根底にあるのは、詳しく知りたいけど自分では無理なことへの興味。
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』とは違い、現代ファンタジーであるものの、本質的に同じ面白さ!
原作による魔法理論という補完
設定そのものは、ベタ。
しかし、現代魔法という理論の作りこみで、他の追随を許さない。
式神から、イデアという情報体次元で一部だけ書き換えるプログラミングへ。
厳密には超能力で、『僕のヒーローアカデミア』のもう1つの可能性!
CADによる発動だから、本人の魔法演算領域だけで決まらない。
拳銃、腕輪、スマホ型のCADを操作すれば、決められた魔法を発動できる。
アメリカに相当するUSNA、中国の代わりの大亜細亜連合と、世界情勢まで描いた。
それらにも魔法師、あるいは、反魔法師のグループがいる。
彼らが恐れる存在こそ、司波達也!
妹の司波深雪とセットで扱われ、「最強だが最弱」という矛盾した設定を活かす。
魔法理論に詳しく、第一高校でも全くの無能ではない。
作者のご都合主義がない
最強の主人公として有名な司波達也ですら、世界のルールに従う。
「分解と再成」はチートだが、よく考えれば、やりようはいくらでも……。
達也は四葉家で冷遇されていて、その枠の中で生きる。
十師族を頂点とするヒエラルキーは、第一高校にいても容赦ない。
ただ力を振るえば、世間と魔法師たちが許さず。
一見すると、ラノベには不向き。
しかし、高校だから身近で、悪くなる現実から目を背けたいニーズに最適。
主人公の達也がここぞという場面で無双するうえ古典的な恋愛だから、女性人気も得た。
後付けのご都合主義がない!
『ダンまち』と同じように、開示された世界観、キャラにそぐわない言動をせず。
作者の操り人形ではないから、30巻を超える長さでも飽きない。
練り込んだ世界観と魅力的なキャラ
魔法科高校の世界は、現代社会として描かれる。
だから、面白い!
社会を多角的に描いた
司波達也は、魔法師の序列に組み込まれている。
四葉家の当主に逆らえず、十師族を敵に回した場合も終わり。
何より、司波深雪を守らなければならない。
他のラノベとの違いは、現代魔法がある社会としての解像度の高さ!
中世から近代にいた貴族と同じく、魔法師の強さは血統による。
家で代々受け継いできた魔法やテクニックもあり、他の名家に張り合う。
ふしだらな真似はできず、第一高校ですら、男女が一緒にいれば大胆な行為……。
親が結婚相手を決めるか認めるのは、戦後直後まで庶民もそうだった。
であれば、秘密結社のように家同士のヒエラルキーがある世界では、尚更。
様々な立場の男女が織り成す、謀略と恋と魔法バトル♪
達也は最終兵器ゆえ、共感できる喜怒哀楽を示すのは周りの生徒、あるいは大人。
ハーレムを築かない男主人公
司波達也は、最強系の始祖でありながら、ハーレムを築かず。
第一高校ではサブキャラ同士のカップリングとなって、昔の少女漫画のよう。
『魔法科高校の劣等生』は、小説家になろう発。
連載のタイミングとして、人気ラノベを世に送り出したArcadiaの影響が大きい。
原作者にSF、戦記物の蓄積があって、他にはない重厚さと説得力。
ラノベで売りやすく、話を引き延ばせるハーレムを削った。
魅力的なヒロインが次々に登場しても、恋愛に頼らない。
それだけの世界観で、中心にいる達也はイレギュラーだから……。
妹という安全地帯
自宅から第一高校へ通う司波達也は、司波深雪と暮らしている。
いかなる時にも「お兄様」と慕い、誰に何を言われても擁護する妹と……。
そのおかげで、兄妹が暮らす注文住宅は安全♪
読者、視聴者も、深雪に安心できる。
『魔法科高校の劣等生』が上手いのは、兄妹を軸に進めていること。
極論を言えば、2人にとってはお互いだけが大切で、世界が滅びても構わない。
恋愛もできない、あっても一緒にランチを食べるぐらい。
帰れば、家門に恥じない成績を上げているか、人脈を築いているかで評価される。
最悪、他家へ養子に出されての絶縁。
主人公に感情移入するファンがくつろげる場所がなければ、やっていられない。
深雪を嫌う人もいるが、もしブレれば、作中で安全地帯が消える。
評価されない項目とは?
2023年にシリーズ累計2,500万部だが、その原型は電撃小説大賞で落選!?
ハードSF、戦記物として、現代魔法を扱ったらしい……。
「ランキング上位が書籍化」という認識がなかった時代の、小説家になろう。
そこで、学園物にした『魔法科高校の劣等生』が累計ランキング1位!
自ら削除するまで、2010年3月上旬から2011年12月のトップを独占した。
その後に、『無職転生』と『転生したらスライムだった件』の連載がスタート。
編集が、「この文体と緻密な設定、どこかで読んだぞ?」と気づく。
書籍化のために連絡を取ってみたら、以前に電撃小説大賞で落とした本人……。
当時は、『とある魔術の禁書目録』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』。
学園の異能バトルや、ハーレムの中から選択するラブコメ。
WEB連載で売れ筋を取り入れ、上手く昇華された感じ?
入学編の司波達也が、強い劣等生という矛盾に首をかしげた周りに言う。
「評価されない項目ですから」
「商業ラノベとして、ハードSFは評価されない項目」という意味であれば。
達也の一言は、先生の魂が籠もったセリフだったのかも……。
第一高校を卒業するまでの難易度
医学部、あるいは、入学後にも競争がある東大に近い。
家としての代々の蓄積か、試験対策の互助システムで生き延びよう!
二科生は30%が脱落する
第一高校の二科生は、卒業までに30%が脱落。
卒業後に魔法技能師のライセンスを取得するから、医学部とほぼ同じ環境。
二科生になるのは、魔法力が低い、または、名家ではない。
戦場へ行く魔法師は、敵に勝つことが最優先。
百家でもないのに彼らを上回る実力も、癪に障る。
ウィードと蔑む一科生に対抗するため、結束する必要がある。
特に、CADの入手と調整で!
司波達也が困らないから忘れやすいが、CADを万全にすることは大変!
筆記をいくら頑張っても、CADの性能を含めた魔法実技でコケたら終わり。
中古品の型落ちで未調整のソフトだろうが、試験は行われる。
卒業までの相互扶助として、二科生が多い部活に入ることが肝要。
実技で講師がいない不利を覆すため、教え合い、模擬戦を繰り返す。
これには、テストの過去問や授業ノートの共有も含まれるだろう。
相互扶助に入れないボッチは、どんどん退学に追い込まれる。
一科生も1~3%のドロップアウト
第一高校の一科生には、最低限の魔法力と家柄がある。
魔法実技にも経験豊富な講師がつき、CADの調整を含め、指導を受けていく。
なので、ドロップアウトする確率はかなり低い。
可能性があるとすれば、下記の通り。
- 上の不興を買う
- 事故、怪我病気による魔法技能の喪失
- 九校戦に出場して惨敗のように、あるまじき失態
一科生に見合った結果を求められ、そのプレッシャーで潰れることも……。
第一高校への襲撃、横浜事変のようなテロ、実戦では、二科生より前に出る。
運が悪ければ、その怪我で退学、あるいは死亡。
二科生が退学する理由の大半は、授業についていけずの自然消滅だ。
けれど、一科生の退学は、政治的な理由で消されたか、去らざるを得ない事情。
退学すれば、キャリア終了に留まらず、実家からも追放される。
優秀な魔法師になることは、義務だ。
成績のクラス分けで残酷さを増す
本編終了後に、第一高校は一科生と二科生の区別をやめた。
けれど、十師族を頂点とするヒエラルキーは、何も変わっていない。
今の成績に応じたクラス替えに満足せず、生徒は自分のステータスを求める。
- 部活による住み分け
- 十師族や百家の生徒による秘密クラブ、サロン
劣等生の視点で、二科生の助け合いが消えた。
同じクラスになっても、流動的。
差別する一科生への団結は失われ、自己責任にすり替えられた。
部活で仲間を作らなければ、孤立したまま……。
見下す存在を失った一科生は、秘密クラブやサロンに入れるかどうか。
入れなければ、何につけても不利!
下にいる劣等生とは違い、そこそこの人生が許されないままで損な役回り。
森崎駿のように百家の支流でパッとしない生徒ほど、厳しい。
ランク付けされた部活による差別と、裏で第一高校を動かす秘密クラブやサロン。
それは加速しつつも、表に出てこない。
司波達也は妹と快適に過ごすために動いただけで、そもそも支配者サイド。
残酷なスクールライフになろうと、構わない。




